世界の困っている場所に行く
地球温暖化で世界の気温がだんだん高くなってきているけど、それと同じように、海水の温度も、ここ100年の間で0.6℃*1高くなっているんだって。海水の温度が高くなると、どんなことが起こるのかな?
目次
海でも進む温暖化
海は、CO2や熱を吸収する性質があり、地球温暖化をふせいでくれるひとつとなっています。なんと、私たち人間が生活することで出るCO2の3割も吸収してくれているのです。
しかし、CO2と熱を吸収した分、海そのものの温度が高くなり、海の温暖化につながってしまいます。
海水の温度が高くなると体積がふえて、海面の高さが上がる原因になっています。
海水の高さが上がると、陸地が水にしずんでしまうこともあるよ。
海水の温度は、一度高くなると、もとにもどるまでかなりの時間がかかります。そして、海の温暖化は、海の生き物へ大きな影響をあたえることがわかっています。
日本の海のサケ、サンマ、イカはどこへ行った?
日本の近くの海では、海水の温度が世界平均の2倍*2も上がっています。これによって、海の中の生き物たちにさまざまなことが起きています。
身近なところでは、家庭でも食べることが多いサケやサンマ、スルメイカなどがほとんどとれなくなってしまいました。これには、漁師さんたちも困っています。
たとえば、2022年に全国の漁港でとれたサンマの量は、たくさんとれた2008年に比べると、わずか5%しかとれませんでした。また、サンマがとれる量で全国1位を記録したことがある千葉県の銚子漁港では、サンマがまったくとれず、はじめて「ゼロ」を記録してしまいました。
これは、日本の近くの海にくるサンマが少なくなっているからです。
近年のサンマの来遊ルート
一方でサケの産地である日本の三陸地方や、カナダのブリティッシュコロンビア州の海では、海水の温度が高くなってサケの稚魚(赤ちゃん)が育ちにくくなり、とれる量がとてもへっています。
反対に、もっと北にある寒くて海水が冷たいロシアやアラスカでは、海水の温度が高くなることでサケが育ちやすくなり、たくさんとれるようになっています。
海の温度が高くなると、生き物がすみにくくなったり、すむ場所が変わったりしてしまうんだね。
- *1気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書
- *2気象庁「日本の気候変動2020」
もっとしりたいキミへ!
海水にとけこむCO2がふえすぎると、どうなる?
人間が出すCO2は、海の「酸性化」という問題も引き起こしています。
海水は「アルカリ性」という性質ですが、海水にとけこむCO2の量がふえすぎると、アルカリ性と反対の「酸性」という性質に変わっていきます。
海水が酸性になると、貝や甲かく類(エビやカニなど)の体の表面をおおう、からがとけてしまったり、できにくくなったりします。実際にアメリカでは、養殖されているカキのからに影響が出ています。
海水の温度が上がり、さらに酸性になってしまうことで、海の生き物たちに大きな影響が広がりつつあります。
温度が高くなってウミガメがメスだらけに!?
海の生き物への影響はこれだけではありません。たとえば、亜熱帯や熱帯の海にすむアオウミガメなどは、絶滅が心配されています。
ウミガメは、卵の中のいるときの温度でオスかメスかが決まり、温度が高いとメスになります。
赤道に近い熱帯の海では、海水の温度や気温がより高くなるため、メスばかりが生まれてしまい、その割合は99%を超えています。
オスがいなくてメスばかりだと、卵を産めずに数がへってしまう可能性があります。
地球の表面の7割をおおう海。その役割は大きく、たくさんの生き物が生きています。地上だけでなく海中にも、多くの変化が起きていることをきちんと知りましょう。