世界でがんばっている場所に行く
自然豊かで、日本にしかいない動植物(日本固有種)がたくさんいる島だよ。小学生のみんなも好きなアニメーション映画「もののけ姫」の舞台になった場所なんだ。
みなさんは、私たちが使っている電気のほとんどが、石炭や天然ガスなどを燃やして作っていること、それによって出るCO2(二酸化炭素)が地球温暖化の原因になっていることを知っていますか?
海外では、太陽や風や水などの自然の力を使って、CO2を出さない方法だけで電気を作っている国や地域がありますが、日本にもそういう場所があります。それは鹿児島県の屋久島です。ジブリ映画「もののけ姫」の舞台になったことでも有名な屋久島は、1993年に日本初となる「ユネスコ世界自然遺産」に登録されました。森の中にはいろいろなコケや樹齢1000年以上の屋久杉なども見られます。
豊かな水の力で電気を作る
自然豊かな屋久島は、日本一雨の降る場所と言われています。降った雨は、森の地面に貯えられ、さらに急な山の斜面を流れる川となり、強い水流を生みます。屋久島のこの環境は、水を使った水力発電にふさわしい場所なのです。
この恵まれた水を使って、屋久島では今から60年以上も前、昭和35年から島で使う電力のほぼすべてを水力で発電し、使っています。雨が少なくなった時のために石炭や天然ガスを使う火力発電所も用意していますが、水が足りなくて火力発電を使うことはほとんどないそうです。
発電をするのは、おもに、「屋久島電工」という会社がもつ3つの水力発電所と、九州電力が管理する小さい規模の水力発電所です。この4つの水力発電所によって、約6万KWhを発電し、屋久島電工の工場で利用されるほか、島の一般の家庭でも使っています。そして、電気を配る「配電」や「送電」も地元の組合などが担当しています。
屋久島町の環境政策課に長年勤めた松田賢志前課長は、「町が発電や送電をやるのは法律に反する、やめなさいと総務省から言われたことも数多くあった」と話します。でもこの状況は東日本大震災を境にほとんどなくなったと言います。
屋久島の先進的な取り組みは、ほかの地域でもお手本になること。みんなが知って真似をしてほしい事例です。今では、水力発電の電気を利用した電気自動車を増やすなどして、鹿児島県も屋久島を「CO2フリーの島づくり」として推進しています。
もっとしりたいキミへ!
自然エネルギーを使うと電気に使うお金が地域にめぐる
屋久島は、発電だけでなく電気を配る「配電」を行うのも地元の会社や組合が中心となって、大きい電力会社に頼らない独立した発電、送電システムを作っています。これは、日本の中ではとてもめずらしいこと。ほかの地域では東京電力や関西電力など大きい電力会社が独占していることが多いのです。
配電のやり方は島を4つの地域に分け、農協や協同組合などの3つの組合と九州電力が、屋久島電工が発電した電気を配電しています。電気を送る送電線などもそれぞれが持ち、電気設備の点検なども地元の電気会社が行います。利益が出た場合は、地域の道路工事など町の生活の整備にも使われます。
つまり、自分の地域で発電や配電ができるということは、電気の原料を遠い国から買わなくていいだけでなく、働く場所が生まれ、電気に使うお金が地域にめぐるということにつながるのです。